へき地・離島における在宅看取り(2021年のつどいのその後)
2021年度日本公衆衛生学会自由集会では、へき地・離島における在宅看取り~島での看取り対応・島民の思い~について情報交換を行いました。その中で話題提供をいただいた新島村国民健康保険本村診療所の看護師の方にコロナ禍を経て、その後の活動について、お話を伺いました。
新島村は、東京都の島しょ部に位置する村です。東京都心から約160キロメートル南に位置し、新島と式根島の2島からなり、人口は約2,500人(新島は約2000人、式根島約500人)、面積は23.87㎢です。交通機関は、大型船や高速船、飛行機(小型機)です。産業は、「くさや」をはじめとした水産加工品のほか、明日葉などの野菜の栽培が盛んです。コーガ石で掘られた石像は「モヤイ像」と言い、渋谷の駅前にあるモヤイ像も新島から贈られました。気候は、周囲を黒潮暖流に囲まれ、気温の日較差や年較差が小さく常春の島と言われています。白い砂浜と青い海が広がる伊豆諸島のひとつです。
診療所は各島に1か所、新島は医師3名、式根島は医師1名の体制です。保健医療福祉に関する機関は、診療所の他に、保健所、保健センター、こども家庭センター、地域包括支援センター、社会福祉協議会、老人ホーム等があります。
2021年のつどいでは、新島村での在宅看取りについて、ご紹介いただきました。
新島では診療所看護師が10年以上の構想から苦労の末、新たな体制を築いていきました。当時、新島では、年間数件~30件程のお看取りがありました。島では、移動手段が限られているため、高齢になると島外に出ることが大変で、島外での検査や治療は希望されないことがあります。島で最期を迎えるにはマンパワーが必要ですが、社会資源が不足しているため、協力的な家族や親戚の方が島内にいなければ、お看取りは実現できません。また、連携している島外の病院とweb会議が可能であることや、島内の医師が在宅看取りに積極的であることから、お看取りを実現することができています。
看護職として、お看取りに関わることについて、最期は住み慣れた我が家に帰りたいと思うのは自然なことで、実現したいと思う反面、家族の協力等の環境が整わなければ社会資源の少ない島でのお看取りは難しいという葛藤があります。また、看護職として、状況を適切に把握し、帰島後のその方の生活をリアルに想像することが大切だと感じます。最期を自宅で過ごしたいと考えるご本人・ご家族の気持ちを最優先に、問題点を洗い出し、解決策を考えて希望に沿っていきたいと考えています。
お看取りに関する関係者の連携については、神経難病の方だと保健所の保健師と連携していました。その他にも連携の必要性を感じ、診療所が主導し、2018年頃より2か月毎に地域連携者会議という会議を開始しました。その会議には、ケアマネージャー、保健センター保健師、保健所保健師、診療所医師、看護師、理学療法士、訪問看護師、村の担当課、社協の方々にお声けして開催しました。
コロナ禍で一時中断した時期が2年程ありましたが、参加者から会議再開の声が挙がり、現在も継続しています。現在はケアマネージャーが主催し、地域ケア会議として継続しています。継続していくことにより、各関係者から出ていた困りごとが徐々に減少し、関係者間の風通しがよくなり、連携しやすくなっています。また、メーリングリスト等もでき、より情報共有がしやすくなりました。そして、現在は、診療所だけでなく多職種が連携する見守りが浸透しつつあります。まだまだ改善は必要ですが、まいた種が徐々に芽吹き始めたように感じています
新島の事例を教えていただきありがとうございました。
新島では、診療所が主導して会議を開始したプロセスがありましたが、他の地域では保健師やその他の関係者が主導する場合もあると思いますので、他の地域でも大変参考になる内容でした。
今後もへき地保健師協会では、へき地における保健医療福祉に関することや保健師活動など、保健師のつどい等の事業を通して考えていきます。
参考
新島村https://www.niijima.com/index.html
新島村観光案内所https://niijima-info.jp/
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